電子メールでの質問にかんする掟
by 
梶井厚志@関西学院大学
経済学部
2020年2月版(1999年3月初版)
基本的に,見知らぬ方からの電子メールを歓迎します.
ところが,電子メールが日常のものとなった反動からでしょうか,対応に困るメールも多数送られてきます.
そこで,メールを出す前に,少し考えていただきたいと,電子メールを送る際のエチケットを
まとめて,このページを作成しました.
メールを書いたら以下を一読し,
少し考えて,必要ならば修正し,それから送信ボタンを押してください.
1.基本 - 梶井宛てのメールに限らず常に守るべきこと
  - 必ず自分の名前を文中に記すこと.メールの差出人欄に、自分の名前が現れるようにすること。
  
何故これが必要かというと:
    
      - 
        そもそも,自分の名前を名乗らないのは失礼
 
      - 
        相手が誰だかわからないのは非常に気持ちが悪いので、読まずに即削除の対象になります。
 
        - 特に、電子メールアドレスが
        ニックネーム系・番号記号系の人
        (例:anpandaisuki@xxx.yyy.co.jp, xrs04523@ppp.qqq.ne.jpのような形)は、差出人欄は非常に重要です。
 
              
      
 
- 初めて出す人には,自分がどのような人物なのか,簡単な自己紹介を書くこと.ごく簡単でかまいません.
  例えば:
  
  - 私はXXX大学でYYYを専攻してるZZZです。
 
  - 私はXXXといいます.現在YYYでZZZしています
 
  
  という形で十分です.何故これが必要かというと,理由は簡単で:
  
  - 
   相手がどのような人かわからなくては返事の書きようがない(返事は,相手に合わせて書くものです!)
 
 
  
  - 
    メールを書いた目的を,本文の始めに簡単に記すこと.
   
      - 
        読み手の負担を考えましょう.始めに何をしたいのかが大体わかると,全体の読解にかかる時間が短縮されます.
 
      - 
        電子メールは「早く,サクサク」が基本です.用件を効率的に伝える努力をすべきです.
        特に,季節のご挨拶などまったく不要です.
 
       
    例文:
       
- 「XXX大学でYYYを専攻してるZZZといいます。○○○にかんして、ご意見をお聞きしたく思い、メールいたしました。
 
- 「今度XXXでYYYをするZZZといいます。YYYにかんして、○○○をしていただきたく、メールいたします。
 
   
  - できるだけ具体的な件名を書くこと.
      - 迷惑メールやフィッシングメールが多いこのごろです。件名から用件が推測できないようなメールが
      知らない人から届いたら,とてもそのメールを開く気になりません。
 
      - 件名を書かない人もときおり見かけます.知り合い同士ならまだしも、
      見知らぬ人からであれば、読まずに削除されても文句は言えません.件名は必ず書きましょう.
 
      - 間違っても件名を「Hello!」、「Question」「Re:your message」 などとしないこと。
      Worm型ウイルスと間違われます。最悪の場合、あなたのアドレスは迷惑メールに指定され、
      今後永久に自動的にゴミ箱行きになることでしょう。「はじめまして」とか「ありがとうございました」,
      「情報があります」などというパターンも感心しません。
 
    
  
   
  - 添付ファイルを送るときは相手の承諾を得ること.添付ファイルがあることをメールの件名に書くこと。(例: 
  「添付あり:先週末の宴会での写真」)
  
    
      - 
        見知らぬ人からの添付ファイル付メールは開かず即削除が現代の常識.
        したがって,添付ファイルのあるあなたのメールは読まれません.
        ウイルスのあふれるこのご時世、いくらウイルス対策ソフトが入っていても
        安全を期すべきです.
 
      - 
        ちょっと紛らわしいのは,自分の署名が添付ファイルとなってついてくるメール.これも削除されてしまう可能性がありますので,
        自分のメールがそういう設定になっていないよう確認するべきです.
 
      - 最近、人の名前をカタる巧妙なウイルスメールが増えています。したがって、いくら知りあいだからといっても
      不用意に添付のファイルのあるメールを開くことは勧められまん。
      よって、添付があることを件名で書くべきなのです。
   
    
   
2.梶井の方針
  - 
    担当する講義に受講登録している学生には返信します.
    また,関西学院大学経済学部・研究科を受験する方,あるいは受験や私の講義の聴講を考えている方々の問い合わせメールには,
    できるかぎりお答えします.
  
 
  - 
    私の著作,講義,および梶井WEB内にある記述に関するもので,
    さらに内容が具体的かつ限定的な質問にはお答えします.
    
      - 
        ただし,講義情報のページやよくある質問FAQコーナーをまず読んで,どのような質問(の仕方)が私に好まれているのかを,ちょっと考えて見て下さい.
 
      - 
        「ぜんぜんわからないから教えてください」という質問をときおり受けますが,これには答えようがりません.聞きたいことを絞り込んでください.
 
      - 
        「X先生の講義をとっているのですが,Yと言う題でレポートが出ています.どうやって書いたら良いのでしょう.」などと言うメールを送りつけないでください.(実際,試験期に良く来る).X先生に聞けばすむことではないですか!
 
    
   
  - 
    経済学,大学受験あるいはその他の社会問題に関する私の見解に関しては,
    それが具体的な質問であり,かつ私が興味を持っていればお答えします.これに関しても,よくある質問FAQコーナーをまず読んでからメールを下さい.
 
  - 
    その他のメールに関しては,返事を書くのは私の気まぐれです.
    今のところ,このページにある掟が守られているメールには,
    ほぼすべてに返事をしています.
 
3.読んでみてうれしい質問
上記2,3,4,にかんして,どのような質問の仕方が効果的か,少し述べておきます.
どんな質問でも,それに答えることで,こちらも勉強になります.少なくとも私はそうかんがえているので,数々の質問にお答えしています.しかし,特に参考になるのは,質問がはっきりしていて,さらに自分なりの答え,自分の考えがそれに添えてあるものです.たとえ,考えに知識が欠けていたり,論理的な不備があっても,なるほどこのように考えられるのだ,このように誤解されるのだ,というようにとても参考になるし,考えが書いてあれば,それに応じてこちらの答えも的確な物になるのです.そのような質問の類型を3つ挙げておきます.
  - 
    どうしてXXXはYYYになるのでしょうか.ZZZの教科書によると,AAAがBBBだからということなのですが,私にはAAAならばCCCにもなると思えるので,納得が行きません.教えていただけますか」
 
  - 
    「XXXがYYYしたことについて,どのようにお考えですか.私はAAAがBBBとなるので,これはおかしいと思います.そもそもこれを肯定するような議論などあるのでしょうか.」
 
  - 
    「F先生のD講義では,XXXはYYYになると教わりました.私は納得が行かなかったのでF先生に質問してみたら理由はZZZであるとのことでした.私は理由はWWWで
    はないかと思ったのですが,F先生は違うとおっしゃいます。混乱してしまいました.WWWは理由にならないのでしょうか.」
 
このように,自分なりの考えが書いてあれば,読み手にとって,問題がどこにあるのか,論点を絞ることが容易になるのです.したがって,質問にたいする回答も短くできるし,それが書き易くなります.例えば,
  - 
    「AAAならばCCCにはなりません.例えば次の例をかんがえてみましょう…」
 
  - 
    「AAAがCCCとなることもあります.例えば次の例をかんがえてみましょう…」
 
  - 
    「それはF先生が間違っています.WWWも理由になり得ます.ただし,ZZZの方が…」
 
このように,「どうしてXXXはYYYになるのか」とか「XXXがYYYしたことについて,どのようにお考えですか」などという大問題に対して,非常に簡単な回答を与えることができます.これらの回答法は,ちょっと本題から迂回しているわけですが,しかし,質問をしてきた人にはそれで十分なはずです.そもそも,ある問題に対する回答はいろいろありえるわけで,そのすべての可能性を書いていれば,立派な論文ができてしまいます.そんなことはできません.
質問をする人は,当然疑問があるから質問をするわけですが,たいていの場合,解決の糸口はすでに自分の考えの中にあるものです.メールを出す時点では解決の糸口がまったく見えないのでなく,それがどこにあるのかを知らずにいるのです.ですから,回答をする人は,その糸口がどこにあるのか,一押ししてあげればよいだけなので,作業は楽になります.ところが,自分の考えを書いておかないと,多々ある可能な解決法を,相手のことを想像しながらすべて論じなければならない.そんなことはできません.
また,自分の考え方が記されている質問は,受ける側に,その問題に対して,思ってもみなかった考え方があるのかを学ぶよい機会をあたえます.上にも書きましたが,これが大変勉強になります.仮に,その考え方に誤りがあっても,です.
自分でその問題をまだ考えていない人は,当然自分の考えは書けないわけですが,
それではそのような人はどうすべきでしょうか.答えは簡単です.
そのような人はそもそも見ず知らずの人に質問メールを送る段階にありません.まずは自分の頭を使ってください.
4.対処に困る質問の例 
上で述べたパターンで,自分の分析の部分を省くと,ちょっと困りモノの質問になることを理解してください.
例えば,
  - 
    「どうしてXXXはYYYになるのでしょうか.わかりません.教えていただけますか」
 
  - 
    「XXXがYYYしたことについて,どのようにお考えですか.」
 
  - 
    「F先生のD講義では,XXXはYYYになると教わりました.これはどういうことでしょうか.」
 
このように漠然としたお題を送りつけられても,そのお題に関して数ページの論文を書いて返信するわけには行きません.また,私は他人の講義の単位をとる手伝いをする気はまったくありません.しかし,このてのメールがけっこうきます.私は世間一般の人に比べればヒマな人間ですが,そこまで暇をもてあましてはいません.どのような質問が「漠然」としているように私に見えるのか,少し具体例を挙げておきます.
  - 「ずばり、日本という社会の中での経済の基本的な役割ってなんでしょうか?素人ですので、できたら分かりやすくお願いします。」
 
これは,質問が限定的ではなく,「ずばり」なんて答えようがありません.メールの返事を書く手間を少しは考えていただきたい。
  - 「先生の教科書を買いました.とても面白く,しっかり勉強したいのですが,4章で行き詰まってしまいました.解説していただけませんか.」
 
お買い上げ,ありがとうございました.しかしこれでも,質問が限定的ではなく,答えようがありません.あえて言うならば,「もっとしっかり読んで下さい,それでわからなければ私の筆力不足です」
  - 「市場の原理について初歩的なところから学んでいるのですが,この原理から旧ソ連と日本、アメリカの経済の違いは何か?という質問にぶつかってしまい困っているのです。どうかわかりやすく説明していただけないでしょうか。」
 
これは授業中に学生がするにはよい質問なのですが,メールで見ず知らずの人にする質問には向きません.
なぜかというと,質問の対象があまりにも大きすぎること,
それからかなり多くの経済学の入門書で議論されていることだからです.
これには,「本をお読みください」としか言いようがありません.
少なくとも,あなたが考える「違い」を書き添えてください.
  - 「経済学とは何をする学問なのでしょう。現実の記述が目的ですか、それとも将来の予測が目的ですか」
 
確かにAかBかを問うという質問形式にはなっていますが,
質問の内容が問題です。
この種の質問をして,
いったいどのような形式の答えがくることを、書き手は
期待しているのでしょうか。
例えば、「記述が目的です。」と一言答えが帰ってくれば、
それでよいということでしょうか。
質問になっていれば良い、というものではありません。
相手が数行程度、多くても200字ほどで答えられる程度の深さの質問をしましょう。
すくなくとも、この種の質問には、私の能力と時間制約の中ではとうていお答えできません.
教科書参考書など他をあたってください.
まとめ
繰り返しますが,メールでの質問は歓迎です.実際,私はメールの質問からいろいろな考えるヒントを得ていますので,これを楽しみにしています.上の掟を守った質問をこれからもお待ちしています.